タイミングという価値
サービス業において、「タイミング」は非常に重要な要素です。どんなに優れた商品や上質な接客スキルがあったとしても、お客様に提供するタイミングを間違えれば、その価値は台無しになってしまう可能性があります。逆に、最も適切なタイミングでサービスを提供できれば、たとえ秀でたサービスでなくても、お客様の受け取る満足度は大きく向上する可能性を秘めているものです。これは、サービス業における「体験の質」が、単なるモノや技術ではなく「人と人との関わり合い」から生まれるものであることが大きな要素だからです。
たとえば、料理を出すタイミング、飲み物を勧めるタイミング、お皿を下げるタイミング、それぞれが適切であるかどうかで、お客様の感じ方は大きく変わります。料理が熱いうちに、冷たいうちに運ばれてくることは当然ですが、お客様の会話が盛り上がっている最中に無理やり料理を押し込んで説明を始めてしまえば“場”を台無しにしてしまう可能性があります。逆に、空いたグラスに気づいてさりげなく次のドリンクを勧めたり、絶妙な間合いで食べ終わったお皿を下げたり、デザートを提案したりすることで「心地よいサービスだ」と感じるものです。
サービス業の本質は「察する力」と「行動の間合い」にあります。これはマニュアル化は出来ず、スタッフ一人ひとりの“気づき”や“観察力”、“感性”に大きく左右されます。表情だけでなく、ちょっとした仕草や視線の動きから相手の心理を読み取り、「今この瞬間、何が最適か」を判断する力が大きく求められます。
一方で我々サービス側が、それが本当にベストなタイミングなのか?を見極めることはそうそう容易なことではありません。現場トレーニングでは「状況を読む感覚」や「お客様の立場に立つ視点」を教え養うことが必要になってきます。
結局のところ、サービス業における“タイミング”とは、「お客様の気持ちを先回りして考え、ちょうど良い瞬間に、ちょうど良い行動をとること」であると考えます。実はそれは、我々の細やかな気配りや思いやりの心から生まれるものであり、これこそがお客様の感じ方や捉え方に深く響くものです。この積み重ねこそが「また行きたい!」と感じてもらい、リピート率の向上や口コミの拡大といった成長につながっていくと言えるのたと思います。
サービスを提供する私たちにとって、タイミングという「目に見えない”間”」を磨いていくことは、そのお店の価値となって築き上げなければならない大切なものなのです。
暑さ続きますが体調管理は万全に頑張りましょう
。2025年7月15日太田 秀和