繁盛店のスタッフ
繁盛するお店には、必ずといっていいほど優れたスタッフの存在があります。商品や立地、広告宣伝などの要素もありますが、最終的にお客様の心をつかみ、「また来たい」と思わせるのは“人”の力です。売れるお店のスタッフには共通点があり、それらは単なる技術ではなく、日々の姿勢や考え方に根ざしたものです。
第一に、繁盛店のスタッフは、お客様視点で物事を考える力を持っています。「自分がお客だったらどうされたいか？」という感覚を常に持ち、先回りした行動ができます。荷物を抱えたお客様にそっとカゴを差し出したり、メニューに迷っている方にさりげなく声をかけたりと、相手の立場に立った“共感力(エンパシー)”が自然と身についているのです。さらに、サービスにおいて重要なのは「何をするか」だけでなく、「いつするか」という“タイミング”です。繁盛店のスタッフはお客様の様子を細かく観察し、「今話しかけるべきか」「そっとしておくべきか」といった“間（ま）”を読み取る力に優れています。この繊細な判断が、ストレスのない快適なサービス体験を提供する要因となっています。
第二に、売れるお店のスタッフは、小さな気配りを日常的に行っています。テーブルの汚れをさっと拭く、ゴミが落ちていればすぐに拾う、子どもには飲みやすいようにストローを調整するといった、一見すると気づかないことも含め細やかな対応が、満足度やリピートにつながるのです。
第三に、忙しい時間帯でも常に笑顔を忘れず、声のトーンや態度を安定して保てるスタッフは、お店に信頼と安心感を与えます。「この人にまた会いたい」と思わせる接客は、お店そのものの印象を高める力を持っています。そして、スタッフ同士の連携もスムーズです。お互いの動きを察し、自然にサポートし合える関係があるからこそ、全体として無駄のない動きが実現できるのです。
加えて、優れたスタッフは学ぶ姿勢を持ち続けています。マニュアルに頼らず、「もっと良くできないか」と自ら工夫し、やりやすい職場に改善します。店とともに進化していこうとするその姿勢は、自然と周囲にも良い影響を与えます。こうしたスタッフが集まることで、お店は単なる“商品を売る場所”ではなく、“人に会いたくて行く場所”へと変わります。
繁盛は偶然ではなく、必然として人の力によって作られるものです。だからこそ、売れるお店のスタッフとは、技術以上に「気持ち」が伝わる人、そしてお客様の記憶に残る“体験”を提供できる人であると言えるでしょう。
2025年10月15日太田 秀和