先日、東京に行ったとき、ある飲食店で体験した出来事です。店内は満席だったのですが、運良くちょうど空いたカウンターへ通されました。オープンキッチンで厨房が丸見えの席です。目の前には女性のスタッフの調理風景が手元から全部見えます。同業の私としてはベストポジションを押さえたわけです。着席すると目の前の女性からやさしく「いらっしゃいませ！」の声が･･･。なんとも暖まるような空気で私を包み込んでくれました。女性は器用に手先を動かしカルパッチョを作っていました。私が心の中で「美味しそうだな･･･」と思った瞬間、その女性から「これ、今朝とれたての魚で、すごく美味しいんです！」と、まるで私の心の中を見通したかのような声が返ってきました。ドキッとした私は思わず「それ１つ下さい！」と注文してしまったのです。この女性は基本的には厨房スタッフのようですが、料理を運び、ドリンクを運び、オーダーを聞き･･･とマルチプレイヤーなのでした。よくよく他のスタッフも観察していると、全員がそのような動き。厨房もホールも区分けは全く無く、スタッフ全員でこのお店を運営している様子がとても良い一体感となって気持ちよく感じられました。このお店、実は２度目の訪問。目の前の女性は、またまた前菜・サラダと器用に料理を作っているのでした。私が「以前食べたエイヒレはありますか？」と聞くと今は入荷してないとのこと。「２月頃には入荷しますので、ぜひ来て下さいね！」と心温まる笑顔に「また来よう！」と思わせられました。私の観察は続きます。彼女は下を向き手元に集中しているかと思いきや、お客様が来店された瞬間に「いらっしゃいませ！」帰られるときも誰よりも先に「ありがとうございました！」の声･･･。作業中もお客様へのアンテナをピン！と張りたてている姿が感じとれました。「この人は凄い！」私は心の中でずっと感心しながら彼女の行動を観察していました。“お客様を観る＝観察する”とは、こういうことなんだなーと考えていたら「お味はいかがですか？」と彼女のやさしい声が･･･。完璧です。本当にやられた気分です。更にお会計の時、別の女性が対応してくれました。大人の雰囲気を出しシャキっとしたこの女性「本日のご来店誠にありがとうございました。今度はぜひ２月にお待ちしておりますね！」なんとも憎いほどの演出です！名札を見ればこの人が店長でした。スタッフ全員が一体となったこのお店、一言で「良いお店」です。“また行きたい！”と思わせる空気感はお客様の観察ほかにありません。楽しんで働く彼女達の姿はとてもとてもステキで印象的でした。では皆さんよいお年を！来年も頑張りましょう！　

2012年12月14日 太田 秀和