1. HOME
  2. お知らせ
  3. 油桶底抜けた

NEWS

お知らせ

社長メッセージ

油桶底抜けた

先日、知り合いのお寺の住職さんに良いお話を聞かせていただきましたので、今日はその内容をみなさんにお伝えします。

昔あるところに、おまじないで病気を治す「まじない婆さん」がいました。なんでも諸国遊行の偉いお坊様から授かったという呪文を唱えるのだそうです。その呪文を聞くと病気があまりにも良く治るということで評判です。ところが、近所のお寺は信者をお婆さんに持って行かれて閑散とした状態…。ある時、近所のお寺の住職は、どんなことをやっているのかと気になり、こっそり偵察に行きました。お婆さんの住んでいる長屋の前には、ずらりと人が並んでいます。中にはよく知った顔もいます。住職は人気のない裏手に回って障子に指で穴を開け、中をそっと覗き込むと婆さんが何やら呪文を唱えています。耳を澄ましてよく聞くと「油桶底抜けた(アブラオケ、ソコヌケタ)」と繰り返し唱えているではありませんか。「なんだ!この呪文は!?」住職は驚きました。お寺に戻って、よくよく思案していると、これはもしかして大日如来のご真言「アビラウンケンソワカ」を間違えて唱えているのではないか?と気づきました。
翌日、住職はお婆さん家の前で人が引けたのを見計らい、再び、まじない婆さんを尋ねました。よせばいいのに住職は「これ婆さんや、人を集めてご祈祷の真似事をしているが、あんたの唱えてるまじないは間違っておる。正しくは「アビラウンケンソワカ」と言うのじゃ!」と告げて長屋を立ち去って行ったのです。まじない婆さん、今までの呪文は間違っていたか…と、それからは「アビラウンケンソワカ、アビラウンケンソワカ」と唱えるのですが、さっぱりまじないが効かなくなり、誰の病気も治らなくなってしまった…ということです。
元々はインドで唱えられていた言葉が、それが伝えられるうちに変化して行ったようですが、インドの言葉と全く同じように唱えないと効果がないのか?と言うと、そういうことではないのです。私たちが信じて唱えることが何よりも大切なことなのです…。という住職のお話でした。

この話を聞いて「何事も形だけ真似てもダメ…」と痛感します。“まずは形から入る”と言って、教材や機材一式を揃えてから勉強する人がいますが、そういう人に限って長続きしないものです。
呪文に限らず、言葉だけ、形だけ真似ても何の意味もなく、それ以上に“気持ち”や“思い”といった“心”がとても大切なのです。
これは料理も接客も同じ。レシピやマニュアル通り真似ても本当の美味しさは伝わりません。
自分なりの思いや気持ちのこもった言葉で表現することが、相手を魅了する一番の“まじない”なのです。
2022年11月15日太田 秀和

最新記事